【Tarzan】そのお悩みは、 走り方に 原因がある!?痛みのクリニックQ&A


膝、脛、腿、腰、肩……、多くのランナーが抱える痛みの原因は?
〝完走請負人〟の牧野仁さんが、豊富な知識を背景に一気に解決。

Q 膝が痛いのは?—A 膝が伸びっぱなしだから。

初心者ランナーが高確率で遭遇するのが膝の痛みではないだろうか。その原因は?
「主に2つ考えられます。ひとつ目は周りの筋肉への負担。便利な都市部に住み、普段1日に続けて歩くのが10分程度という状況でランニングを始める人も多いと思いますが、そんな人にとっては、3km程度のランでも実は脚に大きな負荷がかかっているのです」(〈Japanマラソンクラブ〉の牧野仁さん)
普段1日1kmも歩かないのに、いきなりその4倍近く走れば太腿やふくらはぎは酷使されて硬くなる。すると膝の皿の骨とつながる部分が引っ張られ、膝の痛みとなる。
「もうひとつは足を前に進めようとするあまり膝が伸びっぱなしで着地すること。特に初心者はベタ足で着地する傾向が強く、膝にかかる衝撃は相当なもの。膝の後ろへの屈曲を意識すれば、もう少し柔らかく着地できるはずです」

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Q 腰が痛いのは?—A 体幹で走ろうとするから。

「ランナーの腰痛の原因はさまざまですが、初心者に多いのが腹筋が弱いにもかかわらず、胸を張り上体を安定させて走ろうとするあまり、反り腰になり腰椎の前湾が強調されるパターン。その状態が長時間続くと当然、腰痛も引き起こされやすくなります」
つまり、近年流行の上体を安定させて走る「体幹ラン」が腰痛の原因という可能性があるのだ。上体を安定させたければ、その核となる腹筋まわりを鍛える必要があるが、それなしに形だけ真似ても腰に負担をかけてしまうだけ。
「底屈での着地も腰痛につながります。爪先が伸びたまま着地すると腓腹筋が収縮する。腓腹筋の起始部は大腿骨の下側なので、収縮と同時に大腿四頭筋やそのそばにある腸脛靱帯が引っ張られ、骨盤に負荷がかかるのです」
対策は下の前屈運動。腰椎の過度の前湾や脚裏の筋肉の緊張を緩めてあげよう。

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Q 脛が痛くなるのは?—A アーチが下がっているから。

膝や腰と同様、脛の痛みを訴える初心者ランナーも多い、と牧野さん。
「ランが上手になると、着地時に足裏のアーチをクッションにして衝撃を吸収し、足をバネのように使って次の一歩を踏み出せるのですが、初心者ランナー、特に女性の場合は着地時にアーチがつぶれてしまいがち。そのまま走り続けるとアーチの湾曲がなくなり、結果的に脛に痛みが生じるようになります」
これがシンスプリントと呼ばれる痛み。いきなりスピードをつけて走ったり、オーバーペースで走り続けるのも原因になるという。
「正しいフォームが身につけばある程度防げます。また、しっかりアイシングしたり、休養をとればアーチは自然と元通りになります」

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Q 上半身が凝るのは?—A 肩甲骨を使おうとするから。

「推進力を得るために走るときには肘を曲げて腕を前後に動かしますよね? あれは重力に逆らった動きで、上腕二頭筋だけでは動作を保てないので、肩甲骨やその周囲の筋肉に頼ることとなる。だからランナーの肩が凝るのはある意味当然なのです」
さらに、タイムを狙えるフォームとして話題の肩甲骨を使った走り方も、ランナーによっては上半身の疲れを増す結果につながるとか。
「肩まわりの筋肉が柔らかく、可動域も広ければ、走りながら肩甲骨を上下したり、寄せたり引いたりして脚を前に出すことも可能ですが、多くの市民ランナーは肩甲骨の挙上(押し上げること)しかできないので、かえって背中が固まるのです」
無理に肩を動かすのではなく、とりあえず胸を張るだけでも自然と腕が振りやすくなる。肩に余計な力を入れずに走るためのコツだ。走行中に凝ったら回旋動作でほぐそう。

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取材・文/黒田 創 イラストレーション/安ヶ平正哉 監修/牧野 仁(Japanマラソンクラブ代表)