【Tarzan】
ランニングのリアルな悩みをアンケートで集計、一挙解決!


実際に走ると出てくる、小さなランニング時のお悩み。アンケートで多かった意見を解決します。
奮起して走り始めてみたら、これが楽しいのなんのって。もっと早くランニングに目覚めればよかった、と悔やまれる今日この頃。
でも、実際に走っていくうち、思いもよらなかった問題発生!  みんなどうやって対処しているんだろ? 
ひょっとしてこんな問題にぶち当たってるのは自分だけ?
いえ、そんなことはありません。多かれ少なかれ、何らかの屈託は誰しもあるはず。むしろ、ストレスフリーで日々ハッピーに走っている人の方がレアケース。
では、あなたのランニング時のお悩みは? 全国のファンラン派200人のアンケートから導き出した得票順の5つのケース。2人のプロがその対処法を伝授します。

1.膝が痛い

なんたってダントツの第1位は膝のお悩み。走り始め、走っている最中、走った後にズキズキ、ジンジン、シクシクと痛む膝。ビギナーに限らず、走り込んでいる上級者でも、こうした痛みとまるで無縁とはいかない。
「ひと口に膝の痛みと言っても、痛む場所によって病態が違います。一番多いのは、膝のお皿の下が痛むという膝蓋靱帯炎。膝を伸ばすときに大腿四頭筋が収縮して、脛骨と膝のお皿をつなぐ膝蓋靱帯が擦れて炎症を起こすという病態です」(小山さん)
とくに、しばらく運動をしていない人が久しぶりに走り始めたとき、陥りやすいのがこれ。
理由は、「着地のときに地面の反力をうまく得られず、体重を支える時間が長くなってしまうことが原因。膝やふくらはぎで着地の衝撃を支えて一度カラダが沈む。そこから蹴るという動作に移るので、一歩一歩の負担が大きくなり、靱帯が炎症を起こすと考えられます。
坂道を長時間下るときも、着地の瞬間にブレーキをかけてしまうと膝に負担がかかります」(齊藤さん)
これ以外にも、膝の外側を走る腸脛靱帯が炎症を起こす腸脛靱帯炎、太腿の内側と膝の内側を結ぶ鵞足という部位が炎症を起こす鵞足炎などがある。これらが代表的なランナーズニーの正体だ。
「骨と筋肉をつなぐ腱や靱帯は、筋肉が硬くなることで炎症を起こします。走り始めに膝が痛んでも走っているうちに楽になるのは、筋肉が温まってほぐれていくせい。でも、これを繰り返していくうち一定ラインを越えて膝の痛みが本格化することも」(齊藤さん)
もともとの脚の形も膝の痛みに影響するとか。 「O脚の場合は外側の腸脛靱帯にテンションがかかり、X脚の場合は鵞足にテンションがかかります。日本人はどちらかというとがに股なので腸脛靱帯炎になりやすい傾向がありますね」(小山さん)

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《対処法》体幹を鍛えて、硬い筋肉をほぐすべし。

膝周辺の靱帯や腱に必要以上の負担がかかるのは、そもそも基本の走り方に原因があるという。
「一歩一歩の着地のたびにカラダが沈んだり、下り坂で膝に負担がかかるのは、走るときに体幹が使えていないからです。体幹をしっかり使って走れば、着地の時間が短くなり、膝に負担をかけずに地面の反力で進むことができます」(齊藤さん)
というわけで、走る前にまず基本の体幹トレを行うことを習慣に。デスクワークでしょっちゅう丸まっている背すじを伸ばし、下っ腹に意識を集中させて体幹を引き上げる。この意識を持つことが目的だ。
その上で痛む部位別に対応するストレッチ&エクササイズを走る前、および日頃から行っていけば痛みの予防に。さらに、サポーターなどを活用してランニング時にブレやすい膝のクセを矯正していくと、なおよし。一番やってはいけないのは、対処せず無理に走り続けること。

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2.足の裏が痛い

走っているときに足にかかる負荷は、ゆうに体重の3倍。60㎏の男性なら180㎏、お相撲さん1人分の負荷が1歩ごとにかかってくる。うまく衝撃を逃がすテクニックがなければ、足の裏が痛くなるのも当然。
しかも、走り慣れていない人が、土踏まずが痛むという場合は、
「足の裏のアーチが崩れている可能性があります」(小山さん)
足の裏には筋肉が張り巡らされていて、その表面を足底筋膜という線維性の膜が覆っている。足底筋膜の役割は踵と足の骨を引き寄せてアーチを作り、着地の衝撃を和らげること。
「土踏まずがあまりない扁平足の人は衝撃を吸収しにくく、逆に高いアーチの人は、もともと強く緊張している足底筋膜に、着地のたびにストレスがかかります。どちらも足底筋膜に炎症が起こりやすいのです」
この他、女性に多いモルトン病と呼ばれる病気で足の裏の痛みが生じることも。
「ハイヒールや先の細い靴を履くことで足の指の骨と骨の神経が圧迫され、痛みやしびれが出るという病態です。こちらはむしろ、ランニングシューズを履いて指を解放することで悪化が防げることもあるかもしれません」

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《対処法》まずはシューズで保護しながら、着地に強いアーチを作る。

足のアーチは踵から小指に至る外側縦アーチ、踵から親指に至る内側縦アーチ、そして親指と小指の間の横アーチの3つがある。この三角形のアーチに囲まれた部分が土踏まずだ。
「走り慣れていない人が潰れやすいのが横アーチです。足裏の筋肉を強化してアーチ構造をキープする必要があります。ただ初心者は筋肉がどうしても弱いのでアーチの構造をしっかりサポートしてくれるようなシューズを選ぶことが重要」(齊藤さん)
基本的には、ソールの厚いタイプで、自力では吸収できない着地の衝撃を軽減できるシューズがおすすめ。
「といってもシューズに頼りっぱなしではよくありません。靴底が不安定で裸足感覚の履き心地のシューズで歩いたり、タオルなどを使って足底の筋肉を鍛える習慣をつけましょう」

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3.ペースが保てない

もはやビギナーではなく、自他ともに認める中級ランナー。憧れの3時間台でフルを走り切るためには、キロ5分半くらいのペースを保たなくっちゃ。でも、それなりの距離を走るときに、最初から最後まで一定ペースを保つのって難しい……。
ペース走というと、ほとんどの人はそんな考え方をするようで。イメージでいうなら、まるでツーッと定規で引っ張ったかのようなフラットな直線ペース。齊藤さんによれば、これが大きな落とし穴。
「一定ペースを保つことが、レースの目標を達成する近道だとは思わないでください。なぜなら、その日に一番ギヤが嚙み合うペースは、人それぞれ違いますし、日によっても違います。その日の中でブレのない走り方ができることが重要です」
前回の10㎞走では5分半で走れたけれど、今日はちょいと寝不足で調子が悪い。6分弱でいっとくか、くらいの気持ちで調整をするのがベター。ゆとりを持って走ることで、後々カラダがほぐれてくることもある。また、
「一定ペースを保とうとするあまり、後半失速してしまっては意味がありません。次の練習につなげるためにも、後半はペースアップして終わるのが理想的です」

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《対処法》明確な目標がある人は、さまざまな走り方に挑戦を。

アンケートでは、ペースが保てないときには、「ちょっとゆるいかな?という程度のスピードに落とす」ことで対処している人が多かった。
「ジョギングの場合はそれでもOK。でもレースに照準を合わせたペース走となると話は別です。ゆるいペースを保ったベタ凪の走り方では強くなれません」(齊藤さん)
ペース走といっても、一定スピードを保つばかりが正解ではない。いろいろな走り方をすることで、レース後半に潰れないカラダを作ることもできる。 たとえば、下のように休息を入れて追い込みランを最後に取り入れたり、ペースを段階的に上げていくビルドアップ走に挑んでみるのもいいだろう。
そう、自分のトレーナーは自分自身、メニューの引き出しが多い人ほど強くなれるのだ。

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4.踵が痛い

踵の痛みがあるので長く走れない、とお悩みの皆さまへ。
「踵の痛みの原因は、踵の骨と皮膚の間の柔らかい皮下組織に起きている内出血や足底筋膜炎の可能性があります。
患部を押したときに腫れを感じたり、皮膚が青黒くなっていたら、まずそう思っていいでしょう」(小山さん)
主な問題は着地時の衝撃の大小の差にあるという。
「上下動が少なく、ストライドの小さい走り方なら衝撃も少なく、内出血をするリスクは減ります。
また、着地の衝撃は体重によっても異なります。明らかに体重過多で負担が大きいにもかかわらず、
レース出場権が当たったから無理に走って踵を痛める人も」フォーム+体重管理もまた重要。

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《対処法》足の形によって選べるインソールを活用する。

踵の痛みは足底の形状からくる場合もある。扁平足で着地時の衝撃がもろに踵にかかる、逆にハイアーチで足底筋膜が突っ張って
踵に負担がかかるということも。踵の痛み防止のためには、適切なインソールを活用する手もあり。
例えば足の形状によって選べるインソールなら理想的。

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5.股関節が痛い

齊藤さんによれば、「股関節に痛みを覚えるというのは、ほとんど骨盤が後傾している人」。
骨盤は右下のイラストのような筋肉によって支えられている。骨盤周辺の筋肉のバランスがとれていれば、骨盤はニュートラル、または前傾状態。
「理想的なランニングのメカニズムは、着地して地面から足が離れる直前のときに腸腰筋という筋肉が伸びて、
その反動を利用して脚が前に出るというもの。ところが、骨盤が後ろに傾いていると、腸腰筋が十分に伸びません。
このため、股関節を大きく使うことができなくなります。脚を前に出そうと意識する人ほど骨盤は後傾気味です」(齊藤さん)
バネのような反動の力で脚が前に出るのと、毎度毎度、股関節を使ってよっこらしょと脚を前にもっていくのとでは、後者の方が辛いに決まっている。酷使した股関節が痛むのも当然というわけだ。
また、筋肉ではなく、骨自体に問題があるケースもあるという。
「乳児期に起こる先天性股関節脱臼という病態が隠れていることもあります。股関節が緩く、関節がしっかり嚙み合わないため、
同じ体重がかかっても圧力が高くなって関節がすり減り、痛みが生じます。また、左右の揺れが大きなランナーは
恥骨や坐骨が疲労骨折していることも。エクササイズやストレッチで改善しない場合は、一度、整形外科でレントゲンを 撮るなどの診察を受けることをおすすめします」(小山さん)
ランニングは誰もが手軽に始められるスポーツの最たるもの。それゆえ、障害を引き起こす確率も高いといえる。常にカラダと向き合うことがファンランの秘訣だ。

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《対処法》骨盤の後傾姿勢を改善しつつ、股関節周辺の筋肉をストレッチ。

股関節の痛みを感じながら、これを放置しておくとどうなるか。
「股関節がどんどん動かなくなって、膝から下のふくらはぎで走ってしまうようになります。カラダの中心ではなく末端の振り子を使って走るわけです。結果的に、太腿は細いのにふくらはぎだけがやけに太い体型になってしまいます」(齊藤さん)
痛みだけでなく、体型にもそんなありがたくない変化が。あな、恐ろし。
「自分の筋肉のレベルを超えた運動をすることで、カラダには痛みが生じます。
収入を超えた支出を繰り返すことで赤字になるのと同じこと。股関節の痛み予防のためには、股関節周辺の筋肉の性能を上げることが必要です。性能というのは、強さと滑らかさのこと」(小山さん)
というわけで、基本の対処法は姿勢矯正エクササイズと股関節のしなやかさを養うストレッチ。痛みに向き合って日頃の習慣に。

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取材・文/石飛カノ 撮影/千葉 諭 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮治 イラストレーション/タナカカツキ