【Tarzan】
山を楽しく歩き、走れば 自然にダイエットできるワケ。


山歩き、山走りは正しく楽しめば、自然と体重も落ちる。山で遊ぶと痩せる理由を解説しよう。

今山に行く人が増えている。
ジムトレーニングをやっている人、ランニングを習慣にしている人の中にもトレイルランや登山を実践している人は多い。なぜ、彼らは山にハマるのか? 答えは簡単、楽しいから。自然の中に入っていく行為は、日常生活からの逸脱にほかならない。街にはない体験ができると思えば、それだけでワクワクするだろう。そして、その体験を繰り返すうちに、歩くための、走るための体力が培われていき、長い時間、長い距離を進むのも苦痛でなくなってくる。運動強度は大きくなり、自然に痩せられるのだ。そう、山ではただ楽しめばいいのだ。痩身はオマケ。でも、なんと大きなオマケだろうか。

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山の中の環境がココロに響く。だから長時間歩ける、痩せられる。

木々の緑、広がるパノラマ、吹き抜ける風。これらを五感で受け取りながら、歩いたり、走ったり。ココロは解放され、清々しい気分に浸れることは間違いない。多くの登山者やトレイルランナーは、山特有の気持ちよさを求めて自然へと分け入っていくのだ。そして、気持ちよさは運動の連続性に繫がる。5時間、6時間と歩くことができるし、終わった後も爽快感に包まれる。だから、山に入れば、1日でもかなりの運動量をこなせるのである。
平地ではこうはいかない。市街地をずっと歩いていれば飽きてくるし、アスファルトの路面では足腰に大きな負担がかかり、痛みを覚えることも多い。フルマラソンを5時間かけて走った人がボロボロになるように、街の長時間運動は相当な負荷がかかる。ある実験では1週間に1回、5時間の登山をした場合と、毎日1時間のウォーキングをした場合の脂肪減少量が同じだったという報告もある。山では効果的に痩せられるのだ。
ただし、この実験にはひとつの制約がついていた。それが、日常での食事制限だ。いくら山に行ったからといって、都会に戻ってきたときに野放図に食べてしまえば、痩身は望めない。登山で筋肉量自体がそう増えるわけではないので、日常の食事管理も重要なのである。ベテランの登山家でも街では食事制限をしないと体重は落ちないのだとか。
腹八分にとどめれば、山での行動は痩身へと繫がっていく。まぁ、下山した日は腹も空いているので、多めに食べてもかまわないが。その次の日からは、ぜひご注意を!

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痩せるのは山を下りてから!山中での栄養補給が大切な理由。

山が与えてくれる数々の恩恵によって、人はその懐に抱かれ、快適に歩くことができる。5~6時間は平気で歩けることは前述したし、それが山で運動する大きなメリットでもあるのだ。ただし、注意してもらいたいこともある。長時間、持続的に運動を行うということは、多くのエネルギーを消費することにほかならないのだ。だったら、痩せていいじゃん! という人もおられよう。しかし、山は優しい一面がある一方、厳しさも併せ持っているのである。
一度、山に入ってしまったら、そこからは自分がすべての責任を負うことになる。安全に帰ってくることをまず念頭に置かなくてはならないのだ。エネルギーを消費したまま行動していけば、やがては枯渇して動けなくなってしまう場合もある。これは脅しでも何でもなく、いわゆるハンガーノックで動けなくなってしまう人はいるのだ。そこで、山中の行動では食べることが不可欠になる。
自分が山で消費するエネルギーは簡単に机上で算出できる。それが上の式。たとえば体重70㎏の人が6時間行動すると、約2100キロカロリーとなる。これをすべて補給する必要はない。8割程度を補える行動食を持って、チョコチョコと少しずつ摂っていけばいい。一方、水の必要量も同じ式で算出できる。70㎏の人で2100㎖だ。こちらもチョコチョコ飲んでいく。ポイントは少しずつ、小まめに摂取するということ。こうすることで、長時間安全に動き続けることができるのだ。
それから、日常では朝食抜きの生活をしている人も、山へ行く前は必ず食事をしてほしい。朝食こそが、行動を起こすときの最初のエネルギーになってくれるからだ。これを抜いて山に臨んだ場合、実験では2時間余りで続行不可能なほどの疲労が起きてしまうことがわかっている。朝食でのポイントは、炭水化物を多めに摂取しておくこと。もちろん脂質もタンパク質も摂りたいが、炭水化物=糖質は、即効のエネルギーになってくれる。そのため食事後すぐに行動することが可能になるのだ。

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取材・文/内坂庸夫、鈴木一朗 撮影/内田紘倫 スタイリスト/村上由祐 ヘア&メイク/イケナガハルミ
イラストレーション/千野エー 取材協力/山本正嘉(鹿屋体育大学教授)、山本健一(トレイルランナー)