【Tarzan】糖質OFF作戦 糖質OFFの 素朴な疑問Q&A


糖質オフ生活を始める前に疑問を解決。夏の陣の合戦に、備えあれば憂いなし!
 

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Q.低糖質、低炭水化物、低インスリン、グルテンフリー……。どう違いますか?

A.ご飯やパンのような糖質に気をつけるという点はいずれも同じだが、厳密には違いがある。
炭水化物=糖質+食物繊維。定義上、低炭水化物では食物繊維まで減らすが、食物繊維は血糖値の上昇を抑えて腸内環境を整える善玉だから、低糖質では減らさない。低インスリンは、血糖値を急に上げてインスリン分泌を促す糖質を減らす方法。血糖値の上がりやすさを示すGI値の低い糖質を選ぶ。しかし、同じ食品でも血糖値の上がりやすさには個人差が大きく、食べるタイミングでも上昇具合は変わる。「GI値のような糖質の質ではなく、低糖質のように糖質の量にこだわった方がダイエット効果は高い。加えて糖質を食事の終盤に食べる〝カーボラスト〟を心がけると血糖値は上がりにくい」(山田先生)。最後のグルテンフリーは、小麦粉に含まれるタンパク質の一種、グルテンをカットする食事。パンや麺類をパスするので低糖質になるが、本来グルテンに対する自己免疫疾患であるセリアック病の治療目的で行うもの。減量向きではない。

 
 

Q.オヤツだけはやめられません。どんなオヤツなら食べてもいい?

A.チョコレート、クッキー、煎餅……。仕事中に小腹を満たすオヤツは、総じて糖質たっぷり。今回の糖質オフでは、間食で1日10gの糖質を摂ることを想定しているが、油断するとあっという間に10gなんてオーバーする。3食でオフにしても、間食で糖質を摂りすぎたらダイエット効果は皆無。糖質オフのオヤツを準備しておこう。
三種の神器にしたいのはナッツ、チーズ、乾き物。いずれも糖質が少なく、コンビニで手軽に買える。ナッツではとくにクルミとカボチャの種は糖質が少なめ。チーズはプロセスチーズでもカマンベールでも好きなタイプを選んでOK。「ナッツとチーズは脂質が多く、食べすぎるとカロリー過多になりやすい。ナッツなら10粒、チーズは2〜3片が目安」(美才治さん)。チーズは要冷蔵だから、買い置きは避けて。乾き物では小魚やさきいか、ビーフジャーキーのようにタンパク質が多く嚙み応えがあるものを選ぶべし。臭いが気になるので、会議や商談前などは、うがいか歯磨きで口臭予防を。

 
 

Q.冷たい炭水化物(=レジスタントスターチ)は吸収率が低いから、摂っても大丈夫でしょ。

A.グルテンフリー同様、最近よく耳にするのが、レジスタントスターチという言葉。スターチとは、ご飯やパンなどに含まれる糖質であるデンプンのこと。レジスタントは「抵抗する」という意味であり、合わせて、消化されにくいデンプン(難消化性デンプン)を指す。
レジスタントスターチは食物繊維の一種。温めたデンプンを冷ましたり、保存したりするプロセスで、その一部が再結晶するなどして生じる。消化酵素の影響を受けにくく、分解されないまま大腸まで届くことから、血糖値を上げにくい糖質としてにわかに脚光を浴びている。ゆえにB子のように「おにぎりやポテトサラダみたいに冷たい糖質なら、糖質オフでも食べてOKでしょ」と勝手に思い込む人も多いが、大腸内の腸内細菌で分解されるとカロリーになるし、そもそもおにぎりやポテトサラダに含まれるレジスタントスターチはわずか1%程度。調子に乗って食べすぎたら、その他99%の糖質の作用で血糖値は上がるし、太ります。
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Q.糖質オフだと筋肉が分解されてしまうのが心配。

A.苦労して作った筋肉が分解されるのは、C男ならずとも嫌なもの。カロリー制限でダイエットをすると、足りないエネルギーを補うために、筋肉のタンパク質が分解されやすい。タンパク質は、運動時以外は滅多にエネルギー源にはならないのだが、カロリー制限をするとアミノ酸に分解されて緊急避難的に消費されるのだ。筋肉は安静時の代謝(基礎代謝)の20〜30%を占めているから、筋肉が減ると代謝が下がってしまい、食事量を戻したときにリバウンドに悩まされやすい。ならば糖質オフではどうなのか。
糖質オフではカロリーは減らさないので、カロリー制限ダイエットのような筋肉の分解は起こりにくい。減らすのは糖質のみであり、タンパク質や脂質は積極的に摂ってよし。体内で合成できない必須アミノ酸をバランス良く含む肉類、魚介類、大豆食品などから、タンパク質をしっかり摂ろう。そうすれば筋肉の消耗を気にせずに済むし、カロリー制限ダイエットにありがちなリバウンドに悩まされることも少ない。

 
 

Q.ケトン体が運動にいいと聞きますが、本当?

A.緩い糖質オフで1日130gの糖質を摂る理由は、厳しすぎると続かないうえに、糖質を減らしすぎるとケトン体が増えるため。ケトン体はβ―ヒドロキシ酪酸、アセトン、アセト酢酸の総称。糖質の摂取を減らすと、体脂肪から分解された脂肪酸が増えて肝臓で合成される。ケトン体は脳をはじめとする細胞のエネルギー源だが、本分は飢餓状態のような非常時のエネルギー源。ケトン体に頼り続けるのは不自然だ。C男が言うように、筋肉は運動時のエネルギー源としてケトン体を利用する。ところが、ケトン体の濃度が高くなりすぎると、筋肉はケトン体が取り込めなくなる。「筋肉と違い、脳は際限なくケトン体が取り込めますから、ケトン体は飢餓時でも脳を働かせる働きが主眼であり、筋肉のエネルギー源としての役割は限られたものだと考えられます」(山田先生)。ケトン体は血管の内側を覆う内皮細胞の機能を下げたり、ケトアシドーシスを起こしたりする恐れもあるから、厳しすぎる糖質制限は控えたい。

 
 

Q.人工甘味料なら、たくさん摂っても平気ですか?

A.糖質オフでは砂糖などの甘味が恋しくなることもある。そんなときに賢く利用したいのが人工甘味料。人工甘味料には合成甘味料と糖アルコールがあり、血糖値を上げにくく、カロリーになりにくい。
何でも〝人工〟とつくとカラダに悪い気がするけれど、フグ毒やカビ毒のように、自然界にも毒性の強いものは多い。〝自然〟だからOKで〝人工〟はNGというのは誤った先入観なのだ。それでも気になるなら、人工甘味料の中でもより〝自然〟な糖アルコールを選ぼう。キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールは人為的に合成されたものではなく、自然界に存在するか、または天然素材を原料としたもの。アメリカの食品医薬品局(FDA)も厚生労働省も安全性を評価し、上限量を定めていない。なかでもエリスリトールは血糖値をまったく上げず、カロリーにもならない。「アスパルテーム、アセスルファムカリウムといった合成甘味料は摂取に上限はありますが、摂りすぎなければ安全」(山田先生)。
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山田 悟●やまだ・さとる 緩やかな糖質制限食=ロカボを提唱する、食・楽・健康協会理事。北里研究所病院糖尿病センター長として日々糖尿病患者と向き合い、治療に励む。
美才治真澄●びさいじ・ますみ フードコーディネーター、管理栄養士。糖質オフやベジタリアン食などの提案も行う。51ページでは麺類やカレーなどの糖質オフレシピを担当。
取材・文/井上健二 イラストレーション/岡田 丈(VISION TRACK)