【Tarzan】分解 or 蓄積?有酸素運動の◯と×。


運動するなら効率よく体脂肪を燃やしたい。もやもやを解決して、スッキリ走り出そう。

溜まった体脂肪をしっかり分解し、きちんと燃焼させるために取り組みたいのは、有酸素運動(エアロビクス)。ランニングのように息が弾むペースの軽い動きをリズミカルに続けるトレーニングである。有酸素を行うと体脂肪の分解が促されるし、酸素を介して体脂肪を確実に燃やせる。
筋トレで筋肉をつけると代謝が上がるから、長い目で見ると筋トレも体脂肪を減らすのに役立つ。でも、太っている人は概して運動が苦手だから、有酸素と筋トレを両立させようと二兎を追うと、どちらも続かない。二者択一でどちらか選ぶなら、運動しながら即座に体脂肪が燃やせる有酸素をチョイスすべきなのだ。
有酸素は手軽に始められるが、その効果を高めるコツがある。そこでフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんと一緒に、知っているつもりで意外と知らない有酸素の真実を解き明かしていこう。

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1分走るだけで体脂肪は燃える。→◯

ツチノコや雪男と同レベルの古典的な都市伝説だが、いまでも20分走らないと体脂肪は燃えないと頑なに信じる人がいる。「信じるというより、20分走るのは自分には無理だから、有酸素運動はできない口実にしているのです」(中野さん)。言い訳はやめ、現実を直視しよう。
運動の2大エネルギー源は糖質と脂質。じっと安静にしているときでも、体脂肪はつねに分解されて脂質はエネルギー源として使われている。したがって1分でも5分でも運動すれば、安静時より多くの体脂肪を燃やすことが可能。5分×4回=20分でも20分×1回でも、燃やせる体脂肪量は変わらないのである。
20分の壁がないとわかったら弁解は通用しないから、まとまった時間が取れなくても、スキマ時間を見つけて有酸素にトライすべき。一度始めたら、せっかくだからもう少し頑張ってみようと自然に思える。そうやって地道に継続時間を延ばして。

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休み休みでも有酸素運動は効く。→◯

5分でも10分でも体脂肪は燃えてくれるけれど、持続する時間が長くなるほど多くのカロリーと体脂肪が消費されるのもまた事実。
長時間続けるのが嫌なら休み休みでもOK。15分走って辛くなったら歩くか立ち止まり、息がラクになって元気になったら再開すればいい。30分連続して走っても、途中で10分休んで前半と後半で15分ずつ走っても減量作用は同じである。苦しくなったらいつでも休めると思うと気楽なので、有酸素を開始するハードルがうんと下がるだろう。
むしろ有酸素は休み休み行った方が減量効果は高いという研究もある。秘密はアドレナリンとインスリンという2つのホルモン。中断を挟んでから運動をリスタートさせると、体脂肪を分解する働きを持つアドレナリンの分泌が中断前より増えて、体脂肪を合成するインスリンの分泌がより抑えられる。途中で休むことに罪悪感を持たなくていいのだ。

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運動の時間帯は気にしなくてもいい。→◯

トレーニング未経験者ほど、始める前から、最小限の努力で最大のリターンを得ることにこだわる傾向が強い。だから「もしやるなら、いつがいちばんですか?」という問いはFAQ(よくある質問)だが、それには少々肩すかし気味ではあるとしても、「あなたが続けられる時間帯がベストと答えるしかありません」。
生理的には、一日のうちで体温がピークに達する午後4〜6時が運動に適するのだが、休日はともかく平日のその時間帯に有酸素を行うのは至難の業である。また、いかなるトレーニングも魔法ではないから、1回や2回では体脂肪をごっそり減らせない。体脂肪を減らすには続けないと意味はないのだが、夜型で早起きできないタイプに朝の運動を薦めても続くわけがないし、逆に朝型で夜更かしが不得手な人に夕方以降の運動を薦めても挫折する。体質と生活習慣に応じて自分がストレスなく取り組める時間帯に続けるのが正解。

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ランニングがいちばん効率的に体脂肪を燃やせる。→◯

一秒でも早く痩せたい、せっかちなダイエッターは、数ある有酸素で何が最強かを知りたいかもしれない。その答えはズバリ、ランニングだ。
ランは大方の有酸素より景気よく体脂肪を燃やすが、それ以上に最強な理由は手軽さ。自転車のように高価な道具は不要。水泳やダンスエクササイズのようにプールやスタジオに行く必要もない。シューズさえあればいい。継続しやすく三日坊主のリスクが低く、体脂肪も減りやすい。
次にランは教わらなくてもすぐに始められるから結果が早く出やすい。マラソンで自己ベスト更新を狙うならランニングコーチの指導を受けた方がいいが、ダイエット目的なら我流で走っても大きな問題はない。
また水泳や自転車は続けて技術が向上すると、同じ運動でもより少ないカロリーと体脂肪しか消費しなくなるが、ランでは同様の現象は見受けられない。ゆえに最速で痩せたいなら第1選択肢はランなのである。

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歩くことは優れた有酸素運動である。→×

ウォーキングは万人がエントリーしやすい有酸素である。しかし〝優れた〟有酸素かと問われると、残念ながら胸を張ってイエスとは答えられない。理由は2つある。
第1に痩せるために有酸素に取り組んでいるのだとしたら、ウォーキングでは消費できるカロリーも体脂肪も限られている。ランと比べると、大雑把に言って燃やせるカロリーと体脂肪は半分にすぎないから、減量に向けて励むのは得策ではない。
第2に、ウォーキングでは体質改善作用が限られる。「筋肉が増える、代謝が上がるといったトレーニングの体質改善作用は日常を上回る負荷(過負荷)をかけないと得られません。日常生活で問題なく歩けている人が、スポーツウェアに着替えてウォーキングシューズを履いて歩いても体質は大きく変わらないのです」。歩く習慣がついてきたら、途中で走る時間を作り、徐々に負荷を上げて歩きを走りへ進化させてほしい。

取材・文/井上健二 イラストレーション/ヒラノトシユキ 監修/中野ジェームズ修一さん