【Tarzan】
ジムトレ派も家トレ派も必須です!
ニュートリション科


トレーニングメニューの内容と同じくらい大切なのが、栄養摂取。不足があると、理想のカラダへの道が一気に険しいものになる。

トレーニング翌日は疲れて朝食抜き。→間違い!

【朝食を抜くとカラダ作りは成功しない。】
20代では男性の30%、女性の25%が朝食を抜いており、男性では30〜40代も20%以上が朝食抜きである。でも、朝食を抜いてしまうと、必死に鍛えても筋肉はつきにくい。 筋肉を作るタンパク質はつねにアミノ酸に分解されており、分解されたアミノ酸と食事から摂ったアミノ酸から再びタンパク質が合成されている。 普段は分解と合成が釣り合っているが、筋トレで筋肉を刺激し、さらにタンパク質と糖質といった栄養をタイミング良く摂ると、合成が分解を上回って筋肉は右肩上がりで肥大する。 ところが、筋肥大に逆行するように、筋肉の分解が合成を上回る時間帯がある。それが食間などの空腹時。空腹=エネルギー不足だから、その間は筋肉のタンパク質がエネルギーとして分解されやすいのだ。 一日のうちでもっとも空腹時間が長いのは、前日の夕飯を終えて翌日朝食を食べるまで。なのに朝食を抜くとランチまで空腹が続き、筋肉は容赦なく分解される。 朝食抜きだと筋トレしても筋肥大は「一歩進んで二歩下がる」状態で期待したように進まない。面倒なら卵かけご飯やサンドイッチといったシンプルな献立でいいからタンパク質と糖質を摂ろう。

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タンパク質は摂っても糖質は抜いている。→間違い!

【タンパク質+糖質でカラダ作りは加速する。】
カラダ作りにタンパク質は必須なのだが、タンパク質を摂っているだけでは安心できない。ことにタンパク質と同時に摂りたいのが糖質。 糖質はご飯やパンなどの主食、果物やジュースなどに含まれている。 筋肥大に糖質が必要な理由は大きく2つある。 第一に糖質を摂取すると血糖値が上がり、膵臓から上がった血糖値を下げるためにインスリンというホルモンが分泌される。 インスリンは、タンパク質の元となるアミノ酸を筋肉まで送り届ける運び屋を活性化する作用もあり、筋肉の合成をアシストしてくれるのだ。 理由その2もインスリンによる善行。運動の2大エネルギー源は糖質と脂質だが、筋トレのように強度の高い運動時には糖質がメインのエネルギー源になっている。 その供給元は筋肉内に蓄えられたグリコーゲン。筋トレ後はグリコーゲンが消耗しているが、摂った糖質はインスリンによってグリコーゲンとして筋肉に蓄えられる。 かくてグリコーゲンがしっかりチャージされていると、次のトレーニングも100%全力で頑張れるから筋肉も肥大しやすい。 糖尿病予防のために糖質制限食が広がっているが、筋トレで筋肉をつけるとグリコーゲンとしてより多くの糖質を引き受けられるようになる。 ゆえに糖質を極端にセーブしなくても食後の血糖値が下がりやすくなり、糖尿病予防につながる。

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タンパク質は摂っても糖質は抜いている。→間違い!

【温野菜の方が栄養はたくさん摂れる。】
タンパク質と糖質に加えて不足しないように意識したい栄養素がある。それがビタミンB群。タンパク質、糖質、脂質の代謝にはB群が不可欠。 B₆はタンパク質、B₁は糖質、B₂は脂質の代謝に関わっている。 肉類や牛乳・乳製品といったタンパク源にもB群は含まれているが、B群は水溶性で体内に備蓄できないから、欠乏しないように他の食品からも補いたい。 その有力な供給源になるのは緑黄色野菜である。 運動をすると有害な活性酸素が生じるが、緑黄色野菜に豊富に含まれるビタミンA、C、Eには活性酸素を無力化する抗酸化作用がある。 また肉類や魚介類などの動物性タンパク質を摂りすぎると腸内で悪玉菌が増えて腸内環境が悪化しがちだが、緑黄色野菜から食物繊維とオリゴ糖を摂ると善玉菌が増えて腸内環境が保てるから、一石三鳥なのである。 厚生労働省は1日に野菜350g、そのうち緑黄色野菜120gを食べるように薦めるが、緑黄色野菜は80g程度しか摂れていない。 その背景にあるのは根強い生野菜信仰。野菜摂取=生野菜サラダと思い込んでいる人も少なくないが、生野菜サラダの主役はキャベツやレタスなどの生でも食べやすい淡色野菜。 緑黄色野菜の多くは加熱して食べるから、青菜のおひたし、パプリカやアスパラガスなどの温野菜を積極的に食べるクセをつけたい。 B群は水溶性で加熱時に損出するが、レンジで蒸すと損失は抑えられる。野菜スープなら溶け出した分も摂れて合理的だ。

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絞りたいから食事制限をしながら筋トレをしている。→間違い!

【食事制限とカラダ作りは両立させるのは難しい。】
カラダ作りの主要ターゲットは、胸の大胸筋や太腿の大腿四頭筋といった体表をカバーするアウターマッスル(表層筋)。 その上は皮下脂肪で覆われるため、太り気味で皮下脂肪が分厚いと着ぐるみをまとった状態となり、アウターマッスルを鍛えても体型にメリハリが出にくい。 食事制限(ダイエット)でカラダを絞りたくなる気持ちもわかるけど、まずは筋トレに集中するのが正しい。 飲みすぎ、食べすぎを控えるのは当然だが、必要以上にカロリーを抑えると筋肉はつきにくいのである。 ダイエットでは食事量を抑えて摂取カロリーを減らし、エネルギー収支の赤字を作り出す。 その赤字を補塡するために無駄な体脂肪が燃えるのだが、赤字を補うために使われるのは体脂肪だけではない。 筋肉を作っているタンパク質もエネルギー源として消費されてしまうのだ。 これではひもじくなったタコが自分の足を食べるようなものだから、筋肥大が足踏みするのは当たり前。加えてカロリーが足りないとやる気はあっても力が出ないから、質の高いトレーニングも行えなくなる。 カラダ作りのプロであるボディビルダーは筋肉を十分つけてから、コンテスト前に食事の脂肪分をカットして贅肉を削ぎ落として筋肉美を強調する。 そのテクを真似て、筋肉がきちんとついてから、低脂肪高タンパク質の食事を徹底追求して体脂肪を減らし、メリハリを作ってやろう。

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取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 イラストレーション/泰間敬視 監修/こばたてるみ