【Tarzan】
知って、測って、高めたい。
ランニング持久力診断!


ランナーだったら知っておきたい自分の持久力。計測法から向上トレまでご覧に入れます!

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1ペースで走っているけど、ランニングコースではオバちゃんたちにバシバシ抜かれる。一度冷やかしでレースに出たときは足切りに遭っちゃった。 駅の階段駆け上がると息切れするし。まだ40歳前だというのに、もしや自分、人より持久力が劣っているのか?
持久力を正確に計測するのは実際のところ難しい。ベンチプレスで何㎏挙げたというシンプルな評価法ではないからだ。 その指標となるのは、最大酸素摂取量。 だらだらペースでジョギングしているぶんにはまことに快適、いつまででも走れるような気分になることもある。これは、少量の酸素を取り込むだけで事足りるレベルの運動量だから。 でも、抜かれた相手に負けじとついていこうとすると、たちまち動悸・息切れ、〝救心〟くれえ!という勢いでバテてしまう。 速度を上げるためにはより多くのエネルギーが必要で、そのエネルギーを生み出すための酸素取り込み能力が低いからだ。
有酸素運動でエネルギーを作り出す仕組みをおさらいしよう。体内に取り込んだ酸素は血液によって筋肉に運ばれる。 筋肉内の細胞にはミトコンドリアという小器官があり、この中に酸素が取り込まれることによって、主に脂肪をエネルギーに変換する回路がくるくると作動する。 つまり、多くの酸素を効率的に筋肉に供給することで、速いスピードで長距離を走ることができるのだ。 最大酸素摂取量は、文字通り最大運動時に摂取できる酸素量のこと。1分間に最大限取り込むことのできる酸素量を指す。 これを正確に測るためには、専用の機器が必要だ。 呼気ガス分析装置に繫いだマスクをしてランニングマシンやバイクマシンで徐々に速度を上げていき、およそ10分程度でオールアウトの状態までもっていく。採取された呼気の量で最大酸素摂取量を割り出す。 とはいえ、一般的にはなかなか計測する機会は少ない。そこで活用したいのが、持久力の目安の計測法としてポピュラーな12分間走。
これは12分間、もうこれ以上速く走れないというくらいの全力で走り、走った距離によって最大酸素摂取量を割り出す方法。数値の求め方は下の公式の通り。

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早速、ランニングマシンなどで12分間マジ走りしてほしい。 公式の下に示しているのは数値別のレベル表。一般男性では最大酸素摂取量は34〜44、ランナーレベルでは45〜55となる。ふだんから10㎞以上走っている、またはレースの常連という場合は、走行タイムから最大酸素摂取量を推定してみる手もあり。 ちなみに、下に示したのは距離別レースのタイムの人口比率。さて、あなたはどこらへんに位置している?

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持久力を高め、レースの偏差値を上げる特別メソッドをご紹介!

大酸素摂取量は一般レベルの40だったけど、タイム別の目安でいうとサブ4レベル?いやそんなはずないでしょ、自慢じゃないけど5時間だって切ったことないんですけど? 必ずしも最大酸素摂取量の高い人間がレースで勝つとは限らない。考えられる原因はさまざま。 筋力が不足している、地面反力をうまく利用できていない、ランニングの経済性が悪く無駄なエネルギーを使っている、もしくはガッツに欠けている。 酸素の取り込み量は十分でも、それ以外の条件が絡んでくるのだ。 思うような結果が出せないと悩めるあなたは、もしかすると練習法に原因があるかも。持久力アップのメソッド、伝授しましょう。

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【体力に合わせて走りの内訳を調整。】走りの「点」を「線」にしていく。

1本ダッシュしては立ち止まって棒立ち。ちょっと回復してきたらまた1本ダッシュして棒立ち。もしもし何してるんですか? いや、心肺機能を上げるためのインターバルトレーニングです、という大誤解、結構少なくない。 もし、長距離を速いペースで走り続けられるようになりたい、フルマラソンのタイムを上げたい、ということであれば、そんなアップダウンの激しい練習はまったく必要ない。 心拍数150くらいのレースペースで走り続けるためには、まずは目標心拍数を保つ持続力を養い、そのうえでバリエーションをつけていくことが重要だ。
イメージは下の模式図。一度の練習に30分かけるとして、まず初心者ならば30分を歩き倒す。慣れてきたら、4分間歩いて1分間だけ走ってみる。これを1セットとして6セット繰り返す。 さらに慣れてきたら3分歩いて2分走る、というように、走るという「点」を徐々に延ばしていって最終的に線にするのだ。 30分のジョグができるようになったら、今度は模式図の「ウォーク」を「ジョグ」、 「ジョグ」を「ラン」に変換し、同様に「ラン」の点を少しずつ長く延ばしていく。これがインターバルトレの基本的な考え方。体力に合わせて今日からスタートを。

【ウェーブ走】寄せては返す波の如くペースを変える。

すでに走っているという人におすすめなのは、ウェーブ走という練習法。波の満ち引きのようにペースをこまめに変えて走るというメソッドだ。 LSDと称してだらだら走り、かと思うといきなり50m猛ダッシュ。本人、スピード練習をしているつもりで、これでは落差が大きすぎて持久力が高まらない。第一、オールアウトするようなダッシュ練習を生かせるのは、レースのラストでハイスピードが要求されるシリアスランナーくらいのもの。
一般的なランナーの持久力向上に最も有効なのは、心拍数を極端に落としすぎず上げすぎず、こまめにペースを変えて走ること。これを続けていくことで、全体的なペースが底上げされていく。 最もシンプルな方法は、5分ジョギングして5分歩く。これを1セットとして3セット行う。 物足りなくなってきたら、ジョギングよりやや速く、心拍数でいうなら150〜160くらいのペースで2分間走り、その後の2分間はキロ8分くらいのジョギングに切り替える。これを10〜15本繰り返す。 最後は1㎞をレースペースで走り、次の1㎞は40秒ペースダウン。これを5㎞分繰り返して全体のペースを上げていく方法。 こうしたウェーブ走でいつのまにか持久力はアップしているはず。

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【サンドイッチ走】スピードトレを挟んでスタミナ増強!

続いて中級者編。上記のフルマラソンの記録のピラミッドで、意外と自分のレベルが凡庸な位置にあったと軽くショックな人に。 レースの偏差値を上げたいなら、ジョギングの間にスピード系トレーニングを挟んで、スタミナをアップさせる。距離をやたらに延ばすより、こうした方法が有効だ。
まず5〜10㎞をジョギングよりちょい速めのペースで走る。その後、500mを心拍数160のペースで5本走る。インターバルは90秒、この間、足を止めずに歩くこと。その後、再び10㎞ジョギングして終了。 スピード練習で筋肉中のグリコーゲンをぐっと減らした後、さらに走り続けることで余力の伸びしろが養われて見違えるようにスタミナがついてくるはず。 ちなみに、こうしたインターバル練習は多くても週1ペースで。翌日は疲労を抜くために軽めのペース走かゆっくりジョグなどを練習に組み込むのがベスト。

【100kmマラソントレ】超ハード! 奇数時間ごとに1時間走。

最後は超上級者編。フルマラソンでは飽き足りず、100㎞マラソンに挑戦しようかという強者向けのインターバルトレ。 奇数時間ごとに1時間走を行うというウルトラメソッド。早朝5時にスタートして1時間走り、1時間休んだら今度は7時にランをスタート。 最後は午後1時からのランで終了。走りを分散させることで一回一回の集中力が持続する。スタミナも自信もつく。練習には一日かけて臨む覚悟が必要ですが。

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取材・文/石飛カノ 撮影/千葉 諭 スタイリスト/村上由祐 ヘア&メイク/高松由佳(スチーム) イラストレーション/岡田 丈(vision track) 監修/菊池直樹(日本体育大学スポーツ・トレーニングセンター=最大酸素摂取量)、齊藤太郎(ニッポンランナーズ=トレーニング)

tarzan671-00『ターザン(670号)』は、「ボディサイズ、筋力、持久力……「平均」を凌駕せよ! カラダの偏差値」特集です。
2015年4/23号(4/9発売)マガジンハウス 定価550円(税込)